日本中国伝統功夫研究会

支援を絶たれて心療内科へ

 私が中国武術留学から日本に帰国した2010年3月から約8か月間、教室の運営方法のことで、私はある2人の考え方の間で板挟みになっていました。

 1人は私が27歳の頃に約1年半住んでいた修行道場の指導者で、「春光さんはカリスマ聖職者として振舞いなさい。弟子や指導員を養成して、運営のことは指導員に任せなさい」と繰り返し注意を受けました。

 もう1人は、私の世話係として連絡を取ることになっていた修行道場に所属している女性幹部で、「春光さんは事務から指導まで全て1人で行うべきです。他人に手伝ってもらってはいけません」と日々注意を受けていました。

 この当時、私にはこの2人以外、知り合いはいませんでした。

 修行道場生活と中国留学の期間を合わせると、8年近く社会からドロップアウトしていた私にとって、会の運営は大きなやり甲斐を感じるとともに、とても負担が大きいものでした。

 当時は、入会希望の問い合わせが非常に多く、また既に会員となった生徒の方々の中にも、私と志を同じくして、共に会の活動に貢献したい、という人が多数いたので、私は判断に困りました。

 2010年11月のある日、私は、私が会で協力者を得ることに反対していた女性幹部に電話をかけ、自分の考えを伝えようと思いました。

 もともと私の目標は、私と同じような問題を抱えて苦しんでいる人たちと、太極拳を通じて等身大で繋がりたい。そして中国伝統武術界の素晴らしい精神と実践法を学びながら、ただの先生、生徒という関係ではなく、温かな人間関係を会で築きたいということでした。

 当時、板挟みになっていたことが原因で、情緒不安定になっていた私のことを負担に感じていたのか、その女性幹部は、それまで私が聞いたことがないような内容のことを私に言いました。

 私は8年間、修行道場の指導者に事実とは異なる情報を与えられ続けていたことを知り、大きなショックを受け、目の前が真っ暗になりました。

 「先生は、私に死ねと言っているんですか?」

 私は独り言のように、そう呟いたことを憶えています。

 最後に何を言われたのかは思い出せませんが、約8年間太極拳を通じて交流のあったその女性幹部は、電話を切り、それから二度と連絡はありませんでした。

 私は後日、事の真相を明らかにするために、修行道場の指導者に電話を掛けて質問をしましたが、予想通り8年間言われ続けていた、「私たちは、みんな春光さんのことを娘のように思っている。次世代を導く偉大なリーダーになると思っている」という言葉しか聞くことはできませんでした。

 先日の電話で、私の唯一の関係者たちは「誰も私を娘のように思っていないし、偉大なリーダーになるとも思っていない」ということを知り、今後は一切の支援がなくなったことを悟りました。

 東京で孤立無援になってしまった恐ろしさと、これでやっと自由になった、という2つの思いがありました。

 しかし、既にPTSDの症状を抱えていた私は、このショック体験で心身の状態が悪化してしまい、大切な教室に向かうことが、困難な状況に追いつめられました。

 一週間、私はその心身の状態で教室に行き、指導を務めましたが、限界を感じました。

 自分の部屋で次の教室の日まで呆然と待機しているとき、部屋に見慣れないパンフレットが置いてあることに気付きました。

(そう言えば、あの女性幹部が私に渡したものだ)

 それは、近所に出来たばかりの心療内科(メンタルクリニック)のパンフレットでした。

 私は、そのパンフレットを渡されたことを思い出して、酷く落ち込みました。

(これまで8年間、あの修行道場の指導者に、自分の感覚とは全く違う評価をされ続けてきたけれど、これが本当の私なのか? 私はメンタルクリニックに行かなければならないほど、普通ではないのか…)

 何が本当の自分なのか、何が本当の自分ではないのか、誰の言っていることが嘘ではないのか、当時の私はまったく判断できませんでした。

 ただ、信じられるのは、八卦掌の師である麻林城老師と、私の会の教室に通ってくださる生徒さんたちだけでした。

 私は、「とにかく不眠だけでも解決せねば」「八卦掌の練習を休む訳にもいかないし、教室を休む訳にもいかない」と思い、そのパンフレットの心療内科に行くことにしました。

2018年3月21日 追記(未完成 執筆中)

執筆の目的と趣旨

高校卒業までに受けた虐待

社会人になってからの苦しみ

つかの間の希望

人生の転機

太極拳修行 ~美談の陰で~

中国で学んだ武徳という価値観

帰国後の展開 ~会の運営~

怪我、入院のこと

複雑性PTSDの苦しみ

これから中国武術を学ぼうと考えている方へ

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