加害者による隠ぺい

2012年9月17日、早朝。

私は、自分の部屋の鏡を見て、茫然としました。

「……」

鏡に映っていた私の顔は、擦り傷と腫れで、1/3は壊れていました。

無理やりこじ開けた左目は、内出血で真っ赤で、四谷怪談のお岩さんのようでした。

当時の私は、「日本中国伝統功夫研究会の会長」などと呼ばれていましたが、実際には、ただの身寄りのない自営業でした。

37歳で独身、「でもやっと自立できたから、これからはプライベートも充実させよう!」と思っていた矢先でした。

しかし、その時はまだ「ヒビと腫れ」だけだと病院で言われていたので、手術の可能性のある眼窩底骨折だとは知りませんでした。

まず頭に浮かんだのは、八卦掌の師と、会のことでした。

「何をされたんだろう?」

「麻林城老師に、どう報告したら良いのだろう?」

「100名近くいる会員さんたちに、どう報告したら良いのだろう?」

「この怪我は治るのだろうか?」

「母親には連絡できない、弟も音信不通、友人知人もいない、誰に相談すればいいのだろう?」

私の心は自分の顔の状態を受け入れられませんでしたが、頭はパニックにはならなかったので、この半壊した顔をどうしたら良いのか、鏡の前で必死に考えました。

そして、加害者である幹部会員に電話を掛けました。

私が被害届を出さなかったので、加害者は自宅にいました。

前日までは、一番身近だった人です。

加害者と被害者という意識はありませんでした。

「何があったんですか?」

そう聞きました。

説明は、警察署で聞いたことと同じでした。

本人も、どうしたら良いのか混乱していたので、一旦電話を切りました。

その日は月曜日で、私はクラスのない日だったのですが、翌日からはたくさんのクラスでの指導を控えていたので、しばらくしてもう一度電話をかけました。

「クラスと会員さんのことは、僕が責任をとって何とかします。先生は傷の回復に専念してください」

と言われたので、そうする以外ないと思いました。

しかし、数日後、会の関係者と会員にはこのように告知されていました。

「先生は自転車で移動していたところ、車を避けようとして電柱に衝突して事故を起こして怪我をした」

私は、それを聞いて憤慨しました。

「どうして、まだ正式に通院して結果を聞いていないのに、そのような嘘の報告をするのか?」

答えは、次のようなものでした。

「それれは、指導員の〇〇さんが、先生がしばらく授業に出られないことを、色々な方面から質問をされて、その一つ一つに指導員が答えるよりも、先に幹部の方から全員に告知した方がいい、と言われたからです。先生に相談しなかったのは、お怪我に障ると思ったからです」

私は、言葉を失いました。

「新規の体験受講希望のメールでのお問い合わせにも、そう答えています」

と聞いた私は、なぜ、知らない人にも怪我などと言う話をするのか、聞き返しました。

「それは、先生の嘘をつけない人柄を思って、そう正直に言うのがいいと思ったからです」

それを聞いて、私は怒りで頭が真っ白になりました。

「正直ってどういうことですか、それは嘘じゃないですか、私は電柱になんてぶつかっていないし、私の頭を蹴ったのはあなたじゃないですか。正直、正直というなら、なぜあなたが蹴ったと正直に言わないんですか?」

そう言われた、加害者である幹部会員は黙りました。

私は、これ以上のコミュニケーションは無理だと判断しました。

誰に相談したらいいのか、誰もいない。

親も、兄弟も、親戚も、友達も、知人も、誰もいない。

どうしよう……

目の周囲の3か所の骨が折れているため、激痛で食事を噛むこともできず、目の前が真っ暗になりました。

つづく

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。