今日は「ファーストジャパニーズ」の放送記念日

8年前に「中国武術 横山春光」という肩書きで、 NHK-BS1のドキュメンタリー番組『関口知宏のファーストジャパニーズ』の取材を受けたことがあります。

この番組は、世界各地の伝統文化分野で活躍する日本人の若者たち(この番組ではファーストジャパニーズと呼びます)を、関口知宏さんが密着取材する、という番組でした。

私は20人目の最終回だったのですが、番組終了の理由は「もうファーストジャパニーズが見つからないから」だったそうです。

NHKの番組制作部の方から取材依頼のメールをいただいた時、私はとても自分は「ファーストジャパニーズのメンバー」に入る条件なんてない、と思いました。

先輩のファーストジャパニーズの方々はみなさん一流だし、私のように中国に中国武術を学びに来た人は(当時は北京に住んでいました)たくさんいるだろうし、そもそも私はまだ修行中だし、とても無理だと思い、正直に番組制作部の方にそのことをお話ししました。

「既に完成されているベテランではなくて、これからまさに羽ばたこうとしている30代から40代前半の方を取材するのが番組の趣旨です」とのことで、悩んだ挙句、取材を受けることにしました。

本当は、怖くて断りたい気持ちもありました。

取材を受けなければ、当初思っていた通り「いつか日本に帰ってひっそりと小さな教室から始める」という静かな将来像を変更せずに済むだろうけど、受けてしまったら、きっと大変なことになってしまう。そう思うと恐ろしくなりました。

でも、過去の自分を振り返ってみて、「もしあの時、もっと中国武術の情報があったら、私は違う選択ができたかもしれない」と思いました。

そして、「もし今、あの時の私と同じような人が日本にいたら、本物の中国伝統武術界の存在を伝えられるかもしれない」と思いました。

「ここで保身に走って取材から逃げたら、私は卑怯者だ。これまで何のために辛い鍛錬を重ねてきたのか意味を失ってしまう。それに八卦掌の師匠が私に費やしてくれた時間とエネルギーを無駄にしてしまうじゃないか!」

そういう風に考えて、自分を奮い立たせました。

番組では、程派八卦掌と陳式太極拳を取材していただけました。撮影は3週間に及びましたが、それを50分番組として完成させた編集は凄いと思いました。またナレーションの陳式太極拳の説明は正確かつ的確で「なるほど、そういう風に表現すればいいのか!」と思いました。現地の映像も臨場感と美しさがありました。

撮影中に一度だけ泣き崩れたことがあるのですが、カメラマンさんと一対一で真剣に話す機会に繋がり、プロの仕事とはどういうものか、仕事を通じて幸せになるとはどういうことか、ということを教えていただきました。功夫と情熱を持つベテランのカメラマンさんでした。

中国武術を日本に伝えることの本当の難しさを初めて知ったのは、このファーストジャパニーズの取材だったかもしれません。

永い歴史の中でずっと閉ざされてきた中国伝統武術界の扉は、時代の変化を受け、少しずつ開かれてきました。

継承する者がいなくなる「失伝」という危機に瀕しているからです。

私は日本人ですが、中国思想によってギリギリのところで生きる希望を失わずに、これまで人生を歩むことができました。

番組の放送から、まだ8年、まだまだ8年、たった8年。

そう考えて、人生に残された時間の全てを、中国伝統武術の継承と伝承に貢献できれば、と思っています。

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