人体は小宇宙 ~自転と公転~

もう6年も前のお話しになりますが、当時恵比寿にあるレンタルスタジオで開催していた太極拳教室で、太極拳の基本功となる、纒絲勁(てんしけい・円運動)の指導をしていたときの出来事です。

私の「肘の円運動に意識を置いてください」という言葉を受けて、生徒さんからこういう質問がありました。

「先生、肘の円運動なのですが、こう腕で円を描くと、肘はずっと動いていますよね?」

「これは円運動にはならないのですか? 先生の仰る円運動とはどういう運動のことなのでしょうか?」

このときは、「肘の関節自体を動かしてください」と身振り手振りでご説明させていただいていたのですが、自宅に帰ってから考え込みました。

確かに腕全体を使って宙に円を描けば、肘の関節は空間を円運動で移動しています。

しかし、私が伝えたかったのは、肘関節の自転運動のことでした。

(嗚呼、言葉が足りなかった・・・)

と反省をして、どうお伝えすれば、もっと直感的に理解していただけるかと考えました。

そこで翌週の授業で、改めて「天体の動き」に例えて再度説明をさせていただきました。

「太極拳の円運動とは、例えば太陽の周りを公転している地球自体が自転という回転運動を行なっているように、目に見える円運動から目に見えない円運動までを含んでいます」

「例えば肘関節ですが、腕全体を使ってこのように宙に円を描けば、空間を円を描いて移動します。これが公転運動。そして、移動をしながらも、肘の関節自体は自転運動を行っています」

「そして、ただ単純に円運動をしているわけではなく、この宇宙がたった一つの法則によって存在しているように、太極拳の動きも、この一なる法則に従って成り立っています」

非常にシンプルで美しい説明だと、当時の生徒の方々に共感していただけて、とても嬉しかったことを憶えています。

もう少し詳しく説明をさせていただけるのなら、私たちは太極拳を新たに学ぶ訳ではないということです。

太極の拳理とは、既に私たちの中に内在している法則です。

太極拳が宇宙の法則を武学として体系化し、それを人体を以って体現することを目的としているなら、本来人間はその法則に基いた存在である訳ですから、自分に無いものを新たに学ぶのではなく、本来あるべき自分という生命活動の源を思い出す、という表現が正しいと私は思います。

ここを正しく理解できると、太極拳はとても身近なものに感じます。

もし、太極拳に何かインスピレーションを感じた方は、ぜひ太極拳を通じ、豊かな人間性と人生を追求していただきたい、と私は思っています。

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