日本中国伝統功夫研究会

たまごギョーザ

 さて、目的地のレストランに着くと、さっそく菊花茶がでてきました。

中国餐庁(レストラン)  (北京の太極拳武館では老師方がよく菊花茶を飲まれていました。しかし私は初めは飲み慣れませんでした。でも土地に馴染むとだんだん慣れてきます。とくに菊花の香りはとても好きになりました。太陽と草の匂いがするので、子供の頃に野原で遊んだことを思い出したからです)

 黄色くて不思議な味のする菊花茶を飲みながら、お二人がお料理を注文されているのを見ていると、随分沢山のお料理を頼んでいるようでした。

(そうか、中国には遠方より来た友人を手厚くもてなす、という習慣があるらしいから、歓迎の意味を込めてたくさん注文してくださっているのかな?)

と思い、とても恐縮したのですが、「いえいえ、もうそれだけで十分です」という中国語を話すことなどできるはずもなく、ただただ身を任せるのみでした。

 オーダーが終わりお料理が出てくる間も、お二人はいろいろと私に向かって話しかけてくださったのですが、やはり殆ど聞き取れず、会話にならず、不安やら情けないやらプレッシャーやらで、だんだん気分が落ち込んでしまいました。

 外国に来て、まだ言葉がわからない期間に必要な能力とは、社会的経験がどれだけあるか、というよりも、むしろ動物としての生存能力がどれだけあるか? ということのような気がします。

 中国に渡る直前の私には、「九州の田舎から上京して散々苦労した10年のキャリアがある!」という、ちょっとした自信があったのですが、中国ではまったく役に立たず、まるで3歳児と同じ、いや3歳児にも満たない状態であることに驚きました。

 そんなことを思いながらも、(それでももう来てしまったのだし、大事な目標もあるのだから、まずは目の前のご飯をちゃんと食べて元気をだそう!)と思い直し、次々と服務員(店員)さんが運んできてくれるお料理たちを眺めてみると、

 なにか? ちょっと? 違和感が…

 先の菊花茶に負けない黄色いお料理達がテーブルにいっぱいです。よく見てみると全部“卵料理”です。

(あれ? 北京の人は卵が大好きだなんてガイドブックには書いてなかったなぁ)

と考えていると、何だか心の中が「ざわざわ」してきました。

(なんだろう、この心のざわめきは?)

 ……

(そっか! 私の発音が間違ってたんだっ!)

“清淡”的料理
“さっぱり”したお料理

 レストランに来る途中の車の中でお二人に何が食べたいか聞かれた時に、「清淡的」(さっぱりした)と伝えたつもりだったのですが、“清淡”は中国語で“qing dan”、無理やりカタカナにすると“チンダン”、そして鶏蛋(鶏卵)の発音が“ji dan”で“ジーダン”となります。

 私の発音が正確でなかったため「鶏蛋料理」と誤解されてしまっていたのです。

 テーブルいっぱいの卵料理の謎は解けたのですが、いまさら“卵”ではなく“さっぱり”の間違いでしたとは申し訳なくて言えず、(言いたくても中国語がでてこなかったのですが)そんなに大好物ともいえない次々と出てくる卵料理を、下を向きながら「モグモグ、モグモグ」と食べるはめになってしまったのでした。

 -後日談-
 その後も馮志強老師や武館の方々は、日本から一人で来た私を気遣ってくださり、よく食事に誘ってくださいました。
 しかし、この「横山は卵好き」というイメージが強かったらしく、行きつけのギョーザ館に行くと、いつも卵入りギョーザをオーダーしていただくことになってしまいました。
 最初は食べ慣れなかったのですが、慣れてみるとお肉のギョーザよりさっぱりしてて、今では大好きです。

 つづく

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你好,北京!

一度目の帰国

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