日本中国伝統功夫研究会

天壇公園で太極拳デビュー

 2004年11月上旬、馮志強老師の三女である馮秀茜(フォン シィウチエン)先生に、「武館内での指導だけでは限界があるから、天壇公園へ行って練習するように」と言っていただきました。

 当時の私は、まだ「太極拳と言えば、中国の公園で大勢で練習しているもの」というイメージがなかったので、少し不安を感じました。

 不安はどうにかできるとしても、そもそも一人で市内バスに乗る中国語の会話力も、土地勘もなかったので(当時はまだPHSしかない時代でした)、いつもサポートをしてくれる按摩学校の中国人の友人にお願いをして、天壇公園に連れて行って貰うことにしました。

 友人は、「天壇公園で太極拳」と聞いて、とても喜んでいました。

 私は、天壇公園が世界文化遺産だということも知らなかったので、なぜ友人が興奮しているのかが分からず、とにかく「秀茜先生に言われた通りに、天壇公園というところへ行かなければ」、ということしか頭にありませんでした。

 練習は早朝の時間だと聞いていたので、私はいつもより早起きをして、友人と共に市内バスに乗って天壇公園に向かいました。

 たどり着いて、びっくりです。

天壇公園祈年殿(横山春光)

 (うわぁ~、スケールが! スケールが日本とは全然違う!)

 このとき私は、生まれて初めて祈年殿を見ました。写真でも見たことはありませんでしたし、そもそも天壇公園の存在も知りませんでした。

 この時期は、毎日が驚きの連続でしたが、天壇公園の素晴らしさは格別でした。

 (なんて美しい公園なんだ! 樹の形から鳥の種類から、迷路のような建物や道から、とにかく何もかもが日本とは違う!)

 そんな風に、私が天壇公園の迫力に酔いしれて意朦朧としている間に、友人は巨大な天壇公園内にある混元太極拳の練習グループを見つけてくれました。

 目印の旗には、見慣れた中国語が書かれてあったので、少しホッとしました。

天壇公園の混元太極拳練習場(横山春光)

 しかし、その旗には『地壇活動站』と書かれてあったので、どうして天壇じゃなくて地壇なのかを友人を介して、混元太極拳の練習グループの方の一人に聞いてみると、馮志強老師は主に自宅から近い地壇公園を拠点としているらしく、天壇公園には滅多に訪れないということでした。

 (なるほど、本部が地壇公園で、天壇公園は支部活動ということかな?)

と、私は理解しました。

 天壇公園では馮志強老師の代わりに、ご息女が交代で指導を担当されているということでしたが、その日は、『北京・志強武館』事務所の方が練習をリードされていました。

 私は、自分がとても場違いなよそ者のような気がして、(日本人の私が、本当にここで練習をしてもいいのだろうか?)と、怖気づきました。

 しかし、友人の中国人は何の躊躇もなく意気揚々と混元太極拳の練習に加わり、

 「メイダイヅ(私の中国名)、何を緊張しているの? せっかく来たんだから、みんなと一緒に練習しようよ!」

と呼びかけてくれました。

 我に返った私は、ぎこちないながらも、なんとか参加者の方々の動きを、見よう見まねで練習することができました。

天壇公園の混元太極拳練習の様子(横山春光)

 私はそれまで、武術の練習というのは専門の道場や、施設内でするものだと思っていたので、大きなカルチャーショックを受けました。

 その日は、始終緊張して練習をしたのですが、参加者の皆さんはそれぞれ自分のペースで一人、また一人と帰っていくので、私は(なんて自由な練習方式だろう)と思いました。

 日本にいる頃は、自分のことを「ちっぽけな存在」だと思っていましたが、巨大な天壇公園の中にいると、「自分がちっぽけ」なことなんて、どうでもよくなるような感覚が芽生えてきて、不思議な解放感を体験しました。

 これが、私が中国に渡って初めての「公園太極拳デビュー」となりました。

 その後も、天壇公園には何度も通ったのですが、一度だけ馮志強老師の三女である馮秀茜(フォン シィウチエン)先生が、お忙しいにも拘らず、ご親切に公園内を案内してくださったことがあります。

 ヒノキの気は心臓病に良いことや、天壇公園内は空気が清浄なことや、馮志強老師や他の先生方も公園での練習を好まれていることや、他にも色々なお話しを聞かせてくださいました。

 その頃から私は、「中国人に生まれたかった…」と心底思うようになりました。

 -後日談-
 中国の公園で練習をしている武術グループは、実際はとても閉鎖的で、一般的にはこんなに気楽に参加できる訳ではありませんでした。
 馮志強老師の至られた「人類に幸福をもたらす太極拳」という境地により、老若男女、国籍を問わず、私たちは素晴らしい混元太極拳を学び、練習に取り組むことができます。
 「中国功夫出公園」(中国功夫は公園より生まれる)という言葉がありますが、中国へ渡って間もなく、このような貴重な体験ができたことは、後の学習に大きな影響を与えてくれました。

 つづく

中国武術留学記

中国へ渡ることになった経緯

你好,北京!

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