心急吃不了热豆腐

温かいお豆腐は季節を問わず美味しいですよね、豆腐の起源を遡るとやはり中国に辿り着きますが、現代の中国でも豆腐は飲食店から家庭料理まで広く庶民に愛されています。

共通する食文化があると、そこから生まれた諺を理解することはとても容易です。

心急吃不了熱豆腐
xīn jí chī bù liǎo rè dòu fǔ
どんなに焦っても熱い豆腐を食べることはできない

なるほど日本人ならすぐにイメージできる諺です。

急がば回れ、とはまた違うニュアンスを感じ取れると思います。

私にこの言葉を教えくださったのは、北京にある混元太極拳武館の老師なのですが、まさにその時の私は中国語もまだままならないくせに、せっかく中国に来ているのだからと、焦って必死に太極拳を詰め込もうとしていました。

そんな私に老師は「心急吃不了熱豆腐」と言って、こう説明してくださいました。

「豆腐には豊富な栄養がある、値段も安いし消化もいいからいつでも食べることができる、とくに温かい豆腐は身体を温めてくれるし心にも健康にもいい、まるで太極拳と同じじゃないか。でも鍋に入った熱々の豆腐を一気に食べようとしたらどうなる? 口の中を火傷するし、第一に到底呑み込めたものじゃない。だから焦らずに、静かにそっと鍋からすくい上げて、皿に取ったら焦らず待つ、程よい温かさになったらゆっくりと味わう。だから豆腐は旨いし身体に良い」

つまり「焦って太極拳を上達しようとして無理な練習をすると、却って害になる」という説明で、そう言われたら子供の頃から熱々の豆腐で何度も「熱っ!」と言って痛い目にあった経験のある日本人なら、「そりゃまずい! よし、焦るのやめよう」と思えるのです。

共通の文化と価値観、そして経験を踏まえた語学学習はとても理解しやすいものですね。

アレルギーや好みで豆腐に馴染みがない方もいると思いますが、熱々をゆっくり冷ましながら飲むお茶やスープも同じような趣があると思います。

この記事を書いた人

日本中国伝統功夫研究会の会長。八卦掌と太極拳と華佗五禽戯の講師。中国武術段位5段/HSK6級/中国留学歴6年(北京市・河南省)

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