外国語で日常会話ができるようになりたいと思ったら、まず普段の生活で話している言葉を外国語に訳したいと思うのではないでしょうか?
私がほとんど中国語を話せない状態で中国に渡ったときもそうでした。
ところが遠く海を隔てた外国では、文化も生活習慣も日本とはまったく違うので、「おはようございます」「ありがとうございます」のような基本的な言葉すら「きょとん」とされて返事をしてもらえないこともあります。
発音や単語、簡単な文法を身に付けたあと、どうしたらいいのか圧倒的にわからなくなる日常会話の向上ですが、私が現地で教材として使用して効果があったのは、当時中国でも流行っていた『中国語吹替え版(字幕付き)韓国ドラマ』でした。
なぜ韓国ドラマだったのかというと、中国映画は非日常すぎて一本まるまる字幕を書き写しても日常会話で使えるような言葉はほとんど見つけらなかったし、中国ドラマは国民性が深すぎて、発音も言葉も辞書に載っていないものがほとんどだったのに、韓国ドラマは何を言っているのか想像がつくような気がしたからです。
中国人の友人も同じような意見でしたが、さらに「韓国ドラマは生活の細部まで省略せずに描いていて、日常用語が事細かく翻訳されているし、儒教文化からくる礼儀や作法が日本人には理解しやすいのだろう」と分析していました。
また発音の問題についても「外国映画専門のプロの声優が吹替えをしているから、中国人の感覚としては多少不自然な感じがするけど、これから中国語の発音を正しくマスターするためには、それくらい正確な方があとあと伸びる。はじめに崩したネイティブ発音を身に付けると、上達しても言葉が不明瞭になってしまう」ということでした。
韓国ドラマは100話を超えるものが多かったので、比較的感情移入しやすい作品を選んで、大量のVCD(ビデオCD)を購入し、すべてのセリフを書き写し&音読するという繰り返し学習をしていると、数か月かかりましたが最終話まで学習が完了した頃には、一人で初対面の中国人と簡単な会話ができるようになっていました(リモコンが壊れましたが)
「うどんは麺を食べる前にまずスープを飲んで、先に麺を動かすとスープの味が濁ってしまうから」とか「不思議だね、いつも食べているカップラーメンなのに、外で食べるとどうしてこんなに美味しいんだろう」などのセリフは、日本人にはとても共感しやすく簡単に覚えられますが、中国ドラマの表現だと意味は同じでも食文化が違うのでこのようなセリフにはなりません。ただ、中国語訳された韓国ドラマのセリフ通り言えば問題なく中国人に伝わります。
この中国人と日本人のどちらにとっても違和感のない語彙力を身に付けることは、日常会話の上達に役立つだけでなく、環境や状況の影響を受けにくいので自信につながり、その後の中国語学習に大きく役に立ちます。