混元太極拳

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発祥

北京志強武館
旧・北京志強武館

混元太極拳(正式名称:陳式心意混元太極拳)は、陳式太極拳第十八代継承者 馮志強(ひょう しきょう)によって創設された。

馮志強は陳発科(陳式太極拳九代目継承者)より継承した陳式太極拳の独自の訓練法をもとに、胡耀貞(龍門派十三代継承者)より継承した心意六合拳の内功の真髄と、そして彼の生涯にわたる研究と理解を通じて、太極拳における混元一気の原理を明らかにし、混元太極拳の功法、拳法、器械法、推手と散手の修練方法を確立した。

このようにして、社会発展の需要を満たす混元太極拳は誕生した。

1980年代に混元太極拳が普及して以来、多くの太極拳愛好者に深く愛され、武術界でも広く認知され、国内外で急速に普及している。

系譜

陳発科

陳式太極拳第十七代継承者
1887年‐1957年、字福生、河南省温県陳家溝 生まれ。

幼い頃から父の陳燕熙より家伝であった陳式太極拳を学んだ。深い功夫と高い技術の持ち主で、近代の陳式太極拳の代表的人物であり、太極拳の発展と普及に多大な貢献をした。

1928年以来、北京で武術を伝承した。剛柔を併せ持ち、采、捩、肘、靠、拿、跌、擲、打、などの用法を使いこなし、高い技術と実戦法を持ち、勝つことを目的とし、目に見えぬ力で人を投げ飛ばし、海外では陳発科を聖拳と呼んだ。

陳発科は深い功夫と武徳を持ち、あらゆる分野の人々に愛された。

中国武術界は「太極一人」という四文字が刻まれた銀樽を贈り、彼に対する人々の賞賛を表明した。

胡耀貞

1897年‐1973年、山西省玉慈県 生まれ。

幼少より医学と武術を学び、仏教と道教の修練をしていた。

山西省斉県の戴文君より信義六和拳を学ぶ。山西省斉県の戴文俊より心意六合拳を学び、『守洞塵技拳譜』を得た、山西省にある従山寺の立宏和尚より仏教の功法を学ぶ。さらに、荘子の「呼吸法」と華佗五禽戯を学ぶ。

また、道教の継承者である彭廷軍と王福源に師事し、道教の内功と養生法を修めた。

数十年に渡り武術の修練を重ねた胡耀貞は、医学から決して離れず、道教、儒教、武術、医術の神髄を研究し、『無極針灸』や『五禽術気功』などの著書を残した。

1956年、北京で最初の気功院を主催する。

1953 年、陳式太極拳の子孫である陳発科と共同で「首都武術社」を設立し、両者で副社長を務め、中国武術の発展に多大な貢献をした。

人々は彼を「単指震乾坤」(意味:指一本で世界を揺るがす)、また「鉄掌胡」と呼び、日本の武道界では「拳神」と呼ばれている。

創始者 馮志強

1928年‐2012年5月5日午後

陳式太極拳 第十八代継承者
陳式心意混元太極拳 創始者
中華武林百傑


8歳の頃より童子功、通臂拳、朱砂掌を学ぶ。1948年に心意拳の名家である胡耀貞先師に師事し心意六合拳を学ぶ。その2年後、胡耀貞先師の勧めで、陳式太極拳十七代継承者である陳発科先師に師事し、2人の師に学ぶこととなる。後に「陳式心意混元太極拳」を創始する。


特徴

混元太極拳は、全ての流派の太極拳の源流である陳式太極拳の「纒絲勁」(てんしけい)と呼ばれる円運動をさらに発展させ、「養」「静」「内」を拳理の基とする発展的太極拳である。

その拳理は、心意を以って導かれる混元の気を根本とし、陰陽の原理に従って太極十三勢を修練することによって一粒の混元の気を体現するものである。

気を養い、気を集め、気を促進し、運気を促進することに重点を置き、気の生成、育成、強化、混元を目的とする。

内在する精気神の損傷を避けるため、練習においては極端な跳躍や震脚、発勁などの激しい動作を禁じており、練功者の精神と健康を守り安全な修練を目的としてる。

陳式太極拳との外形上の違いは、伸びやかな円運動と、放松(ファンソン=力を抜く)であり、他に類を見ない養生法と内功法を備え、流派や老若男女を問わず、世界中の愛好者がこの混元太極拳を学んでいる。

練習方法

一、心神虚静貫始終

まず心を“虚静”という状態にします。心が虚静となれば自ずと全身も虚静となります。そうして動が生まれるのを待ちます。

二、中正不偏一気存

立身中正を実現するために、次の要求を満たします。

「頭正項堅、虚領頂勁」
頭と首を正しく立てます。

「胸空腹実、上虚下実」
心を虚にし胸を空の状態にする、この状態で丹田に気が沈むと上半身が自由になり、下半身が安定します。

「塌腰斂臀、脊柱堅直」
背骨を自然な曲線に立て臀部を納めることで、腰が開き自由な状態になります。

「両肩鬆開、沈肩墜肘」
両肩と両肘を緩めます。

「座胯屈膝、垂直相対」
股関節を緩め開く、膝は股関節の開きに準じて屈折します。

三、以意行気心為主

意を以て気を導く、決して力を使わず心で動作を行います。

四、沈入手求柔順

力でなく心で動作を積み重ねることで、しなやかな動きを身に付けます。

五、内外合一上下随

内三合(心と意、意と気、気と力)、外三合(肩と股関節、肘と膝、手首と足首)の合を求め、全身で行う動作を協調一致させます。

六、虚実転換全在腰

全身の動きを腰で主宰します。

七、一一緊済剛柔

には必ず柔があり、緊には必ず剛があります。柔の力を養い剛の力に昇華することで、太極拳の求める剛柔の力を養成します。

八、渾身倶是纒絲圏

全身が太極(宇宙)拳(法則)の運動法則である纒絲(らせん運動)を身につけます。

九、胸腹折叠運開合

胸と腹の開合運動により全身の気を巡らせます。

十、拿住丹田練内功

丹田から気を発し、全身を巡った気が再び丹田に還ることで、太極拳の核心である内気、内勁、内功を養います。

十一、静心慢練是活桩

心を静め、身体を緩ませ、ゆっくりと練習することで、太極拳に必要な三宝である精気神を養うことができます。

十二、会練会養能成功

全ての要求を満たし焦らず真摯に練習を重ねれば、太極拳は大成し、長寿の秘訣となります。

(訳:横山 春光)

套路名称

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