秋はどこへ行った?

楽しみにしていた秋。10月はまだ暑くハロウィンのムードは何もなく、それでも11月に入れば多少は秋めいてくるだろうと期待していた秋。

それは暑さと寒さが交互に入れ替わって体調を揺さぶっただけの「ただの季節の変わり目」と化し、よく分からないままに過ぎ去ってしまいました(悲しい)。

そんな私の救いは、10月末と11月の天気の良い日曜日に、3回ほど教室の生徒さんたちと一緒に授業の場所を井の頭公園と小金井公園に移して練習をしたことです。「この機を逃すな!」とばかりに、当日告知の強行スケジュールを組んでまで開催しましたが、3回中2回は蚊に襲撃され、残りの1回は北風に吹かれ、楽しみにしていた過ごしやすい秋の陽気を十分に満喫することはできませんでした(でも遠足みたいで楽しかったです。そして私が参加しなかった別の日は爽やかで好条件だったそうです、羨ましい)。

春夏秋冬の移り変わりが豊かで、季節ごとの行事が多いことが日本の魅力ですが、近年の気候変動を踏まえて改めて年間計画を立て直す必要があると思いました。

私の個人的な感想もありますが、吉祥寺の街も今年は秋のディスプレイが少なく、11月初旬からクリスマスとお正月関連の商品販売に力を入れていたので、もう過去の習慣は捨てなければ季節に追いつけないのだと悟りました。

狐につままれたような気分で12月になってしまい、練習にもなんとなく身が入らなかったので、先日気分を入れ替えて久しぶりに井の頭池のスワンボートに乗ってきました。

風に要注意のスワンボート

北側の植物は池に迫り出している
北側の植物は池に迫り出している
スワンボート
帰りが逆風だとなかなか進まない

陸上からの眺めとは違い水上の世界は思ったより動的で、太陽に向かって勢いよく枝を伸ばす植物に圧倒されたり、陸以外の全エリアにおいて人類の身体能力を凌駕する水鳥(カモやカワウ)に追い越されたりと、予想以上に楽しかったですが、帰り方向で逆風に煽られ時間をオーバーしそうになったので、全力でペダルを漕ぐ羽目になり自然の力を思い知らされました。

海のない内陸で発祥した北派武術の八卦掌や太極拳ですが、水が豊かで船での移動が盛んな南方の南派武術では、不安定な船上でも安定して立てる歩法と身法が発展したと聞いたことがあるので「たまに陸を離れるのも良いリフレッシュになるな」と思いつつ、両足をワナワナさせながらスワンボートを降りました。

秋の名残りを惜しみながら練習

八卦掌の歩法練習(扣歩・コウブー)
神田川源流の潤いスポットで深呼吸

よく考えたら八卦掌や太極拳の発祥地である北京や河南省も、春と秋が極端に短く、主に夏と冬の時期が長いという気候でした。留学中に現地の人からよく聞いたのは「お洒落な長袖シャツを着る季節がない」という言葉でした。暑くもなく寒くもなく、過ごしやすい季節にサラッと着て出かけたい長袖シャツ、それを着る季節がない、ということです。

それでも限られた時間でお洒落やお出かけを楽しみますし、旧暦の行事も大切にします。中国には「計画没有変化快(変化は計画よりも早い、どんなに計画を立てていても変化には追いつけない)」という諺があるので、予想が外れたり物事が予定通りに行かなくても、臨機応変に一日一日を大切に過ごすことが大切だな、と年末に差し掛かって痛感しました。

年末年始は吉祥寺を離れて一泊二日の合宿があるので、それまでは井の頭公園の自然の力を借りてしっかり心身を整えて臨みたいと思います。

1月になったら都内のあちこちの公園で水仙が咲き始めると思います。心忙しい年末ですが、皆さまも身近にある季節を大切にしてくださいね。

この記事を書いた人

日本中国伝統功夫研究会の会長。八卦掌と太極拳と華佗五禽戯の講師。中国武術段位5段/HSK6級/中国留学歴6年(北京市・河南省)

目次