今年の春は例年よりも風の強い日が多いですね、私は風が弱まるタイミングを見計らって井の頭文化園にお花見に訪れています。
現在西園では河津桜が満開を過ぎ、大寒桜や寒緋桜が見頃です。白い花びらが可憐な大島桜の開花も始まり、一足先に春爛漫の雰囲気で、あちこちの枝ではたくさんのメジロが桜の密を吸うために大賑わいです。
生命活動が活発ではない真冬の公園は陰気が旺盛なので、内家拳(太極拳・八卦掌)の静功を積むのに適しているのですが、人も動植物も春到来の喜びにお祭り騒ぎになるこの時期は、あまり練習に向いているとは言えません。
冬は天気も気温も比較的安定しているので、身体もその環境に慣れてしまっているのですが、その状態から変化の激しい春の気候に適応させるには数週間から2か月ほどかかります。冬の間は当たり前にできていた練習が突然できなくなる、ということも往々にして起こりえるので焦りは禁物です。
日本で中国武術を長く続けるコツは、日本の風習に抗わないことだと私は思います。
春夏秋冬と四季の変化が豊かな日本の伝統行事や風習を大切にすることは、心と体のバランスを保つのに大きな効果があるので、実践しないともったいないです。忙しい日々が続くと、つい節句の行事を疎かにしたり忘れてしまったりするのですが、そうすると不思議なことに疲労が溜まったりストレスを強く感じるようになったりします。
私が留学していた北京(八卦掌の発祥地)と河南省(太極拳の発祥地)では、春と秋が短くそれ以外の季節が長いため、日本のように一年通じて天候の変化が目まぐるしく雨も多い、という環境ではありませんでした。公園練習の妨げになる天候の日が少なかったので、長期休暇となる春節の2週間以外は、ほぼ毎日公園で練習できていました。なので帰国してから安定して練習ができないことに相当な焦りを感じていたのですが、結局は天気には勝てないので従うことが一番の方法だという結論に至りました。
そして今ではこう考えています。
一年を通じて様々な気候の変化に身体を適応させなければならない日本人は、それだけで高度な心身の鍛錬を実践している。
あくまで個人的な感覚と持論ですが、これだけ難易度の高い環境の中で中国武術の練習を続けているということは、相当の苦労や工夫をして身体の調節機能を維持しているということなので、そのことは皆さんそれぞれ自分に誇っても良いのではないかと思います。
もうすぐ春本番ですが、既に井の頭公園は春休み期間中の学生や外国から来た観光客でいつもより賑わっています。メジロや樹々の芽も生命力で溢れているので、私も短い桜の時期を思う存分楽しんで過ごしたいと思います。