中国最古の医学書『黄帝内経』の「素問」には、「春の過ごし方」について記されています。この春とは立春(2月4日頃)から立夏(5月4日頃)までの3か月を指します。
春の三か月、これを発陳(はっちん)という。
春には万物が蘇り、生命力が躍動し、生き生きと栄え、朝気と生気に満ちあふれています。
この季節には、夜更かしを避け早起きをし、庭をゆっくりと散歩し、髪をほどき、衣服をゆるめて体をリラックスさせ、精神を春の陽気とともに伸びやかにすることが大切です。
これが春季に相応しい「生気」を養う道理であり、もしこの道理に背けば、肝気を傷つけ、夏に適応する能力が低下してしまいます。その結果、寒性の病変が生じることになります。
春の練習方法
春はどんな運動でも心地よく取り組めますが、私のお勧めは、中国最古の気功法である華佗五禽戯の「鹿戯(しかのぎ)」です。
鹿は肝にあたり筋を鍛えます。鹿を真似た伸び伸びとした動きで血管の流れを良くし、肝臓の機能を助けることができます。
草を掘り返したり、スキップしたり、遠くを見渡す動作はとても楽しく、心も伸びやかになります。
太極拳であれば、室内よりも公園などの屋外で新鮮な空気を吸いながら練習しましょう。一年で最も過ごしやすく、また生命力に溢れた美しい季節を堪能してください。
注意することは、暖かくなったからといって、急に薄着にならないことです。本格的に夏を迎えるまでは体を冷えからしっかり守る必要があります。
日本は山が多く、陽の当たらない場所にはまだ冬の寒気が残っています。「花冷え」という言葉もあるように、寒暖の差が激しい土地では、最低気温を想定した服装で運動に取り組みましょう。
食事は肝機能を補うものを
辛温で発散性のある食材を多く摂取し、陽気の上昇を促します。例えば、麦、なつめ、豆(上昇・発散作用あり)、春菊、ネギ、パクチーなどです。
肝気が過剰な場合、食事療法には以下のような方法があります。
- 酸味のある食べ物を控えること。これは酸味が肝木に対応するため、酸味を控えることで肝気の助長を防ぎます。
- 二つ目は甘味のある食べ物を多く摂ること。甘味は脾土に対応するため、多く摂取することで肝が脾を侵すことによる病を防ぎます。
- 辛味のある食べ物を多く摂ること。辛味は肺金に対応するため、辛味を多く摂ることで肝木が肺金を侮ることを防ぎます。
また、春の気を多く含んだ旬の山菜などもお勧めです。
しっかりデトックスして夏を迎えよう
冬の季節は寒さや乾燥から身を守るために、熱や水分が体外に排出されにくくなっています。冬を乗り切るエネルギーをしっかり保つ反面、体に不必要なものも溜め込んでしまいがちです。
春になると人体の陽気が自然界の陽気に従って上昇し始め、肝気の働きが盛んになります。
肝臓は解毒を司る臓器です。この時期に新鮮な食事を摂り、寒さで縮んでしまった身体を伸び伸びと緩めると、筋肉と血管が柔軟になり、春の陽気とともに十分な血液が肝臓に運ばれます。清浄な血液を全身に巡らせ体内をデトックスして元気に夏を迎えましょう。