中国最古の医学書『黄帝内経』の「素問」には、「秋の過ごし方」について記されています。この秋とは立秋(8月8日頃)から立冬まで(11月6日頃)までの3か月を指します。
秋の三か月、これを容平(ようへい)という。
秋は収斂を主とし、万物が収まり、肺の気が内に応じ、養生は肺を養うことを主とすべきです。
早寝早起きをし、鶏と共に起き(鶏と同じ生活リズムで)、心を安らかにし、気を収斂させるべきです。
これは天地の気が収斂し始めるため、人もまた収まるべきで、外に散らすべきではないからです。
また、「秋の厳しさを和らげる」ことが必要です。これは秋の殺気を緩和するという意味です。秋には殺気があり、そのため古代の裁判官は「秋後の処刑」という言葉をよく使いました。
秋が来ると、人は自然と殺気を帯びるようになります。そのため、この時期は殺気を和らげ、気を収め、「秋気を平らかにし」、秋の気を穏やかにして、あまり厳しくならないようにすべきです。
これに逆らえば肺を傷つけ、冬には消化不良による下痢を引き起こし、冬に備える力が減少します。
秋の練習方法
秋は早寝早起きをし、屋外運動を多く行うことで、体力を増強することができます。
また、暑さの厳しい夏の練習の成果(功夫)を収める時期です。発汗を伴う運動や、負荷の高いストレッチから徐々に、内面を重視する練習方法に切り替えます。
生まれつきの体質が弱く肺気が不足している状態、または夏の過労により肺の機能が衰えてしまった場合は、呼吸が弱り、声に力がなくなる、といった症状が見られます。その他にも、自然と汗が出る、風を嫌う、顔色が青白い、脈が弱いなどの症状も見られます。
このような症状には、華佗五禽戯の「鳥戯(とりのぎ)」がお勧めです。
鳥は肺にあたり皮膚を鍛えます。呼吸には肺呼吸と皮膚呼吸がありますが、渡り鳥である鶴は、長時間空を飛ぶとき全身で“気”を呼吸しているといわれています。長寿の鳥であり、美を愛し、飛翔に長け、平衡能力の優れた鶴の動きを真似することで、気を調和し肺と皮膚を健やかに保ち、経絡の流れをよくし病を防ぐことができます。
食事は水分が豊富で体内を潤すものを
水をたくさん飲みましょう。水は陰の中の至陰であり、万物の母です。秋は乾燥を主とし、燥邪の特徴は乾きなので、天地の乾燥に対抗するため水分をたくさん摂取する必要があります。
中国では秋にはよく梨を食べます。
大自然に触れて秋の収穫を享受する
秋は楽しい気分を保ちましょう。深秋になると、気は収まりに向かい、秋の厳しい気配により草木は枯れ、万物は寂しげとなり、人間にとっては秋の憂鬱症候群を引き起こしやすく、うつ病にまで発展することもあります。
そのため、秋の積極的な面を多く見るようにし、人との交流を増やし、よく話をし、屋外活動にも多く参加するなどしましょう。
自然の中に溶け込んで収穫の喜びを感じることで、秋の憂鬱な感情の影響に対抗することができます。