程派八卦掌

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歴史

八卦掌は、開祖である董海川祖師(1796年~1882年)から約200年の歴史があると言われています。

中国の著名な内家拳の一つであり、もとの名は「転掌」と呼ばれ、後に「八卦掌」「八卦転掌」「八卦游身連環掌」「八卦連環掌」と呼ばれるようになりました。

多くの転掌が八卦の方位に従っており、技法は歩法と共に縦横無尽に変化し、実戦においては相手の動きによって臨機応変に千変万化します。《周易》の剛柔相済、八卦相蕩、運動不息、変化不止の道理を基礎にしたことから、後に「八卦掌」と呼ばれるようになりました。

この八卦掌は清朝の河北省文安朱家務の董海川により創始されたと伝えられています。道教の“転天尊”(走圏導引術)と武術の攻防法を基本の運動形式として結びつけ、易の理論から武術の運動規則を採用し“動を本”とし“変化を法”とする基本拳理を形成しました。1874年、董海川が北京粛王府において八卦掌法を伝えたことから急速に北京・天津・河北に広く伝わり、その後各地に広まり発展しました。

系譜

開祖 董海川

八卦掌開祖 董海川(とうかいせん)祖師

1796年‐1882年
清嘉慶元年、河北省文安県朱家務 生まれ。

幼少より武術を学び、青年時代にはすでに高い武功を持っており、各地の高名な師を訪ね有名な山や川を渡り中国全土を旅した。

董海川は師を求める旅の途中で、江蘇と安徽の間の深山の密林の中で、異人に遭遇し卓越した武功を授かったと伝えられています。

その後、苦練を重ね、道教の「転天尊」(走圏導引術)と、武術の攻防法を基本の運動形式として結びつけ、易の理論から武術の運動規則を採用し、「動を本」とし「変化を法」とする独創的な基本拳理を形成しました。

程派八卦掌 創始者 程廷華

八卦掌第二代継承者 程廷華(てい ていか)

1848年‐1900年
8月14日、河北省深県 程家村生まれ。

北京の崇文門外で眼鏡店を開設し、その後大きく発展させた為「眼鏡の程」と呼ばれていた。

程廷華は幼少より摔跤(中国式レスリング)を好み、その技は非常に巧みで、後に董海川に師事し八卦掌を学んだ。

正直な人柄で真面目に練功を積み、悟性が高かった程廷華は、董海川の好感を深く受けその秘伝を得て、後に董海川の得意弟子の一人となった。

第二代継承者 程有信

八卦掌第三代継承者 程有信(てい ゆうしん)

1895年‐1970年 6月29日 午前10時

北京武術界の中で三大老拳師の一人と呼ばれており、身体が小さかった為「矮爺」という愛称で呼ばれていた。

程有信は幼少より武術を学び、程派八卦掌創始者である父(程廷華)の教えを深く受け、家伝の八卦游身連環掌の基本功法を授けられた。

日々練功する父のもとを離れず、行如龍、発力如虎、換式如鷹と例えられる身法の全てを心と身体に深く焼き付けた。

父の死後は、天津に住む兄の程有龍のもとに移り、さらに練功の日々を送った。

その後、武功は大いに高まり、同時に大槍の劉徳寛、単刀の李存義の武功の精華を得て自身の功夫を更に高めた。

第三代継承者 許立坊

八卦掌第四代継承者 許立坊(きょ りつぼう)

1934年‐2001年 8月15日 午前9時
河北省清河県 武家那村生まれ。

幼い頃に従軍中であった父を亡くし、その寂しさを紛らわすために、玩具代わりに刀や棒を振り回し遊ぶのを好んでいた。

1950年、許立坊は同郷の武術家である呉炳瑞に師事し、形意拳と八卦掌を学んだ。

後に、北京安定門外小関北里に定住した許立坊は、呉炳瑞より程派八卦掌 第二代継承者である程有信に八卦掌を学ぶよう推薦され、1962年に程有信に正式に認められ関門弟子(最後の弟子)となった。

許立坊は非常に正直な人柄で、真面目に練功を積み、きわめて努力家だった。

師の程有信に対して実の父のように尽くしたことで、師の奥義を伝授された。

第四代継承者 麻林城

八卦掌第五代継承者 麻林城(ま りんじょう)

河南省項城生まれ。字永徳。

現在はアメリカ合衆国ニューヨーク市に在住。国連本部武術教練。

幼少より武術を学び、張振業より十数年にわたり少林功夫の鉄布衫と八卦拳の武功を学ぶ。

青年時代に安徽省淮店地区で開かれた武術大会に出場し、拳術で優勝、刀術で二位を獲得。

その後、程派八卦掌創始者・程廷華の息子である程有信の関門弟子、許立坊に師事しその門をくぐった。

数十年にわたり専門的に武学を研究し、八卦掌を発揚するべく恩師と大先輩の教えと諭しを汲んで八卦掌を公にした。

北京市及び全国の武術大会の招待を受け、八卦掌と器械で9回の優勝を修め、また国際武術大会に出場し八卦掌の種目において連続5回の優勝を修めた。





程派八卦掌の系譜

特徴

八卦掌は「站功」と「歩法」を基本功とし、「走圏」を基本運動の形式とし、「擺扣歩」「趟泥歩」を基本歩法とします。

拳のかわりに掌を使い勁を発し、拳で発することのできる勁の殆どを「掌法で」発揮するのが、この八卦掌の特徴です。

その掌型は龍爪手、牛舌掌に分けられます。

主な攻撃方法は、托、代、領、搬、扣、劈、進、提、拿、穿、点、などがあります。

また基本の掌法には「八大定勢掌」「八大母掌」「八卦六十四環掌」「八卦游身連環掌」などがあり、武器には「八卦鉞」または「子午鴛鴦鉞」「八卦刀」「八卦剣」「八卦槍」などがあります。

八卦掌の動きの要求は、順項提頂、松肩垂肘、暢胸実腹、立腰溜臀、縮胯合膝、十趾抓地などであり、修練の原則として滾鑽争裹,奇正相生、走転拧翻、身随歩走掌随身変、行走如龍、回転若猴、換勢似鷹、威猛如虎、避正撃斜、以曲刹直、以動擾静、以静刹動などが挙げられます。

養生と武術の双方の効果については、八卦掌の練法の本質がそれを決定しています。

途切れることのない左旋右転の動きの中で、人体の陰陽の平衡を保ち、全身の経絡の流れを促し、腰と腎を鍛え、人が本来宿す潜在エネルギーを引き出します。

内なるは心神を守り、精神を集中し、その浩然の気を養って病気を防ぎます。

八卦掌の走圏中、内側の脚は直進し外側の脚は内側へ入る独特な走行方法をとり、人体の各関節、特に膝関節また股関節内に真気を流し、心身を鍛練し、健康を保ち、長寿の効果を発揮することができます。

同時に護身術としても優れ、内外からの身体の危険を回避する優れた武術でもあります。

八卦掌を学び、修練を積むことにより、おのずと「明心見性、体用兼備」(心境を清浄にして、自らの本性を見い出し、内なる原理とその表現としての行動を兼ね備える)の境地に達することができるのです。

修練方法

一、学習の目的を正す

異なった学習の目的が、異なった結果を生みます。長い練功の日々に耐える決心と忍耐力が必要です。また、真伝の秘伝を得るには、師を尊う心を持つことが大切です。

二、基本功を積む

いかなる流派の武功を習得するにも、基本功を鍛練することはとても重要です。

三、理を明らかにする

程派八卦掌とはその他の掌法と「何が違うのか」を知ることが大切です。程派八卦掌の優れた特徴はどこにあるのか、妙技はどこにあるのか、という違いを理解することが大切です。

套路名称

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