現代中国を代表する太極拳の大家である馮志強(ひょう しきょう)老師は生前、太極拳を学ぶ心得についてこう語られていました。
太極拳を学ぶということは、太極の深遠な真理を知ることであり、人格の完成を目指す終わりなき道である。
この道のりは決して直線的であってはならず、むしろ自然の摂理に従うべきものである。焦りや性急さは修行の妨げとなり、孤独な修練は人との縁を絶ち、真の進歩から遠ざかってしまう。
その代わりに、穏やかな円を描きながら、人々や自然との調和を見出し、宇宙の運行のように螺旋を描いて静かに旋回しながら真理への道を歩んでいく。
そうして私たちは天人合一の境地へと向かい、身体と精神の両面において、より深い理解と成長を得ていくのである。
目を閉じてこのお言葉を思い出すたび、馮志強老師の優しさと偉大さに胸が熱くなり、天人合一という境地の素晴らしさに感動し、日常生活の不安や寂しさ、悩みや苦しみから解放されて、「よし練習しよう!」という気持ちが自然に湧いてきます。
中国伝統武術界における精神と哲理の深遠さ、そして高い完成度を示す貴重なお言葉です。
馮志強老師の人徳
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