黄帝内経に学ぶ 〜夏の養生法〜

黄帝内経に学ぶ夏の養生法

≪素問・四気調神大論≫より
夏三月,此谓蕃秀。天地气交,万物华实,夜卧早起,无厌于日,使志无怒,使华英成秀,使气得泄,若所爱在外,此夏气之应,养长之道也。逆之则伤心,秋为痎疟,奉收者少,冬至重病。

中国最古の医学書『黄帝内経』の「素問」には、「夏の過ごし方」について記されています。この夏とは立夏(5月5日頃)から立秋まで(8月7日頃)までの3か月を指します。

夏の三か月、これを蕃秀(ばんしゅう)という。

夏には、天気が下降し地気が上昇して両者が交わり、植物は繁茂し万物は実りをつけます。

人は夜更かしを避け早起きし、暑い夏の日を厭わず、怒りを抑え、体内の濁気を外に発散させ、心身ともに爽やかに過ごすべきです。

これが夏季に応じた「長気」を養う道理です。

もしこの道理に背けば、心気を傷つけ、秋には瘧病(ぎゃくへい)にかかりやすくなり、秋の「収気」を養う力が減少し、冬にはより重い病を患うことになります。

夏の練習方法

四季の中で最も柔軟性を高めるのに適した時期です。気温が高い環境では体が常に温まった状態にあるため、怪我をしにくい特徴があります。練習を始める際は、適度な負荷のストレッチで関節と腱の柔軟性を養いましょう。

私のお勧めは、中国最古の気功法である華佗五禽戯の「猿戯(さるのぎ)」です。猿は心(現代で言う脳)を鍛えます。機敏に動き、変幻自在の妙技を持つ猿の動きを真似することで、心神の主である血管を舒通し、頭脳を柔軟にし、心を開く効果があるといわれています。

また、代謝も活発なこの時期は、陳式太極拳の二路(速さと剛を重視した套路)や、刀術・剣術といった運動量の多い練習に適しています。この時期に基礎体力と筋力を向上させることで、来たる厳しい冬を健康的に過ごすための身体能力を養うことが重要です。

食事は体内の熱を排出するもの

夏の食事は他の季節よりも重要です。夏は陽気が外に盛んで、陽が極まれば陰が生じ、陰気は内に宿るため、夏は淡白な食事を心がけ、脂っこく甘く濃い味付けは控えめにし、緑葉野菜や瓜類などの水分の多い野菜や果物を多く摂取すべきです。

食事は塩分や糖分を控えめにし、辛い物や油っこい物は控えめにして、内熱が生じて他の病気を引き起こすことを防ぎましょう。

「長夏」の注意点

「長夏」(旧暦六月、新暦7~8月頃)は脾臓に対応し、脾気が最も旺盛で、消化吸収力が最も強い時期です。

中医学では、長夏は土に属し、人体の五行の中で脾臓も土に属します。長夏の気候の特徴は湿気が多く、この「湿」は人体の脾臓と最も密接な関係があります。

「湿気は脾に通じる」と言われるように、脾臓は長夏に対応します。そのため、長夏は脾臓を丈夫にし、養い、治療する重要な時期なのです。

私のお勧めは、中国最古の気功法である華佗五禽戯の「熊戯(くまのぎ)」です。

熊は脾にあたり脾胃を鍛えます。良く食べ、たくましい体を持ち、慎重で力強い熊の動きを真似することで、脾胃の働きを助け、食物の消化吸収を促し、丈夫な体格をつくり、また睡眠・精神の安定を高めることができます。

豆類を食べて整える

食事は豆をたくさん食べましょう。特に三伏(さんぷく)の時期は豆を多く摂取することで、脾胃を丈夫にし、湿気を取り除く効果があります。

この時期に適している豆類は、緑豆、白扁豆、小豆、赤飯豆、ハトムギ、えんどう豆、グリーンピース、青豆、黒豆などです。これらの豆は米と一緒にお粥にしたり、肉と煮込んで食べたりすることができます。

慢性病を改善する絶好の季節

「冬病夏治」という言葉があり、三伏の時期は陽気が最も盛んで、患者の陽気を充実させ、抗病力を高めることができます。

夏の時期に病気を発症する前に「基本を培う」ことで正気を助けます。人体の正気が旺盛になり、抵抗力が増強されれば、冬になっても病気になりにくくなるか、あるいは発症しなくなります。

陽気不足、肺気虚弱、虚寒による痛み、そして免疫機能低下などの疾病は、すべて春夏の治療が他の季節よりも効果的です。

この記事を書いた人

日本中国伝統功夫研究会の会長。八卦掌と太極拳と華佗五禽戯の講師。中国武術段位5段/HSK6級/中国留学歴6年(北京市・河南省)

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