歴史
創始
華佗五禽戯は古代中国後漢の晩期に神医と呼ばれた名医・華佗によって創造され、約1800年の歴史があるといわれています。
また現在に伝えられている中国気功や中国武術の鼻祖と呼ばれ、のちに発展した数多くの気功・武術の門派に、その思想と運動体系の影響を及ぼしました。
発展
華佗五禽戯が創始されて以来、民間の健康法として各地に流伝され、現在では、中国各地に華佗五禽戯より発展した多くの五禽戯の流派が存在し、人々の健康に大きく貢献しています。
1982年6月28日、中国政府の衛生部と教育部、そして当時の国家体育委員会が、五禽戯を含む中国伝統健身法を医学系の大学が推奨する『保健体育科』の内容に加え、さらに2003年には、中国国家体育総局が新たに編集した五禽戯を、同じく国家が制定した“健身気功”の一つに加え中国全土に推奨しました。
系譜
創始者 「神医」華佗
西暦紀元145年-208年
字(あざな)を元化(げんか)といい、中国安徽省亳州市に生まれる。
中国後漢時代(三国初期)の有名な医薬学家で、内科、外科、婦人科、小児科、針灸科などに精通していた。
当時、中国は到るところで戦場と化しており、また洪水や干ばつ、疫病に見舞われ、多くの人々が苦しい日々を過ごしていました。
その光景に心を痛めた華佗は、地位を求めず各地を駆け回り病人の治療にあたっていました。名誉を得ようとせず、全精力を漢方薬の研究と医学の向上に注いでいた華佗は、その人柄と卓越した医術から「神医」とも称されていました。
また華佗は高度な外科手術の技術を持っており、特に外科手術おいて初めて”麻沸散”という薬を用い全身麻酔の外科手術を行ったことから、「外科医学の鼻祖」と称されています。
第2代継承者 吴普
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第53代継承者:路武挙 中医師(95歳)
第54代継承者:王澤 清朝武進士(91歳)
第55代継承者:王乃普 清末毅軍五営統領(93歳)
第56代継承者:譚継林 亳州武術名師(86歳)
第57代継承者:董承焕 (92歳)、刘时荣(不明)
第58代継承者:馬偉财、陳静
第五十七代継承者 董文煥
1920年10月-2012年
安徽省亳州市十八里鎮に生まれる。
15歳より武術を学び、当地の武術の名師であった譚継林(1896-1975、魏崗鎮前譚楼)に10年間教えを受け、形意拳の真意と華佗五禽戯を授けられる。
これまでの武術の修練と伝承は60年を超え、60余りの武場を開き、門下生は数千名に及ぶ。
中国各地を問わず育成した学生は武術教練として武術界の各教育現場で活躍している。何伝志、孫乾坤、田青華、石万英など30数名。
数十年間農村に住み農業を営み、その傍ら武術を学び深く五禽戯を研究してきた。また無私に弟子を導き、功を立て徳を積み、拳芸に優れ多くの人々に称えられてきた。
日本中国伝統功夫研究会 横山春光
第五十七代継承者 董文煥老師と第五十八代継承者 馬偉財老師をはじめとする弟子より、安徽省亳州市において伝統華佗五禽戯を学ぶ。2009年9月、董文煥老師より「中国亳州華佗五禽戯健身養生館」日本支部の認証を受ける。
特徴
華佗五禽戯の最も優れた特徴は、動物の動きを模範するという、その独特の鍛錬法にあります。
五禽戯が誕生する以前、古代の人々は厳しい大自然の条件と闘いながら暮らしてきました。その中で自然界の動物の能力に大きな尊敬と羨望を抱き、その動きを模範することで、体を鍛え、厳しい環境に耐え抜く力を得ようとしました。
後に、神医と呼ばれた医師・華佗により、先人より伝えられてきた導引吐納術と養生思想、さらに中医理論の『黄帝内経』の陰陽五行説によって、体系化された養生法として「五禽戯」が生み出されました。
各戯の健康効果
虎戯(とらのぎ)
虎は腎にあたり骨を鍛えます。「虎爪」という虎の手を真似た手型を用い練習を行うことで、全身の腱・骨格・関節を鍛え、健やかに保つことができるといわれています。
鹿戯(しかのぎ)
鹿は肝にあたり筋を鍛えます。鹿を真似た伸び伸びとした動きで血管の流れを良くし、肝臓の機能を助けることができるといわれています。
熊戯(くまのぎ)
熊は脾にあたり脾胃を鍛えます。良く食べ、たくましい体を持ち、慎重で力強い熊の動きを真似することで、脾胃の働きを助け、食物の消化吸収を促し、丈夫な体格をつくり、また睡眠・精神の安定を高めることができるといわれています。
猿戯(さるのぎ)
猿は心(現代で言う脳)を鍛えます。機敏に動き、変幻自在の妙技を持つ猿の動きを真似することで、心神の主である血管を舒通し、頭脳を柔軟にし、心を開く効果があるといわれています。
鳥戯(とりのぎ)
鳥は肺にあたり皮膚を鍛えます。呼吸には肺呼吸と皮膚呼吸がありますが、渡り鳥である鶴は、長時間空を飛ぶとき全身で“気”を呼吸しているといわれています。長寿の鳥であり、美を愛し、飛翔に長け、平衡能力の優れた鶴の動きを真似することで、気を調和し肺と皮膚を健やかに保ち、経絡の流れをよくし病を防ぐことができるといわれています。
練習方法
一、動作は正しく行う
五禽戯は動功を主とした功法の一種で、形を以って気を導きます。よって動作の規格は非常に重要で、その全ての動作のそれぞれに特定の内容と作用があり、動作を正しく行うこと、その作用を得ることができます。
特に学習を始めた頃に正しい動作を意識します。なぜならば、学習の初めに学んだことは印象に残りやすく、後に修正するのは難しい過程になるからです。
二、意識を正しく運ぶ
五禽戯は生体工学の気功に属します。それは五禽戯の様々な動きが中医学の理論に基づき編み出されたものだからです。
五禽戯は私たちの内臓を直接的に鍛錬することができます。中医学においては人体は五臓を核心とした一つの有機集合体と考え、五臓-五体-五官-五音-五志-五方などが密接な関係を持っていますので、正しく意識「意念」を運用することが五禽戯の練習に欠かせない重要なポイントとなります。
例えば、虎戯の練習を行う時、獲物を探す動作では慎重な意識を用い、獲物を捕らえる動作では勇猛な自信に満ち溢れたを意識を用い行います。またその他の動作もこのように意識「意念」を用います。
このように五禽戯を練習するには、正しい動作と意念の運用を必要とします。
三、意識の修養
意識の修養は日常生活の中にあります。中医学においては、心の主は喜、肺の主は悲、肝の主は怒、脾の主は思、腎の主は恐と言われ、練習を通じ気が満ちてきたのであれば、その意識を修養しなければなりません。怒で気は上がり、悲で気は消耗し、恐で気は下がり、思で気は結び、喜で気は緩みます。このように情緒は人体に影響に大きな影響をもたらしています。
四、たゆまず精進し根気よく続ける
中国には「活到老、学到老、還有三分没学好」という言葉があります。すなわち「一生をかけて学び、それでもなおかつ学び終えることはない」という積極的かつ謙虚な心で、根気よく学ぶことを諭しています。
五、練と養を結合させる
練とはすなわち鍛錬のことで、養とは休養のことを指します。稽古は度を超えてはならず、必ず休養しなければなりません。盲目的に修行を積むことは体を傷つけることになり、役に立つことはありえません。
『礼記』の中にある孔子の言葉にもあるように「張而不弛、文武弗能也。弛而不張、文武弗為也。一張一弛、文武之道也」即ち、ある時は張り、そしてある時は緩める、それが文王・武王の政道である。このように全ての道理の原理は共通した概念を持っています。
また華佗はこう言っています「人体は運動を欲している、しかし極を過ぎてはならない。視(見る)が過ぎれば血を傷つけ、座(座る)が過ぎれば筋肉を傷つけ、行(歩く)が過ぎれば筋肉を筋つけ、寝(寝る)が過ぎれば気力を無くし、立(立つ)が過ぎれば骨を傷つる」このように、練と養を結合させることは非常に重要です。
まとめ
五禽戯はいくつかの動作や姿勢だけではなく、それらに相応する意念活動と呼吸法を備えています。これがスポーツと気功の根本的な違いです。程よい運動量で、幅広い年齢層の人々に適用し、異なった体質の要求に応えることができます。