REPORTAGE / 2004–2010

横山春光の中国武術留学記

自主練習の日々

北京の冬

2005年4月末、年末に引っ越しをして4か月が過ぎた頃、新居での生活もずいぶん慣れてきて、日用品の買い物や自宅での料理も、少しずつ自分だけでできるようになっていました。

馮秀茜老師から混元太極拳二十四式と混元太極剣を、陳項老師からは混元太極拳四十八式と混元太極刀を習い終えていた私は、しばらくの期間は自主練習に励むようにと言われていたので、日常生活を送りながら、武館や公園で反復練習に取り組んでいました。

まだ体力はなく、筋肉痛と向き合う日々でしたが、小钱に教わった中国語の成果もあり、少しずつ中国で生活することに自信が持てるようになり、練習にも余裕が出てきました。

素手で行う太極拳と違い、剣や刀は重さがあるので、利き腕の右手だけで練習していると身体のバランスが悪くなるような気がして、左手に持ち替えて基本の動作をただひたすら繰り返す練習も取り入れてみたり、経絡やツボの場所を覚えて中国按摩の知識を勉強したり、とにかく時間はたっぷりあったので、自分のペースでじっくり、興味のあることに取り組んでいました。

ただなんとなく、これから私はどうなるんだろう、という漠然とした不安は消えなかったので、それを振り払うように、日々目にする光景や耳にする中国語に夢中になりました。

4月になると、北京市内の建物の公共暖房が一斉に止まります。「暖房が止まると、風邪を引きやすい人は一斉に引くんだ」と現地の人から聞いていたとおり、武館に行ってもあまり人がいないことが多かったので、そんな日は早々に引き上げて天壇公園に行き、いろいろな武術の練習を見学したり、天気の悪い日は王府井の書店に行って、中国武術の本や字の練習帳を買ったりしました。

北京に来て半年余りで三つも新しい套路を学習し、それだけでも十分なのに、さらに混元内功、混元纏絲功、保健拍打功という養生法も学ぶことができ、その充実感から、スランプで感じた焦りもいつのまにか消えていました。

(今は陳項老師に言われたとおり、まず心身を健康にして、中国語を話せるようになって、中国人を理解できるようになって、じっくり自分の太極拳を練り上げていくんだ!)

(そうすれば、きっと未来は開かれるに違いない)

ただそう思うしかない私は、毎日、混元太極拳の自主練習と中国語の勉強に励み、初めて迎える中国の春を感じながら、期待に胸を膨らませていました。

初出 2010年8月

つづく