自主練習の日々

2005年4月末、年末に引っ越しをして4か月が過ぎた頃、新居での生活も随分慣れてきて、日用品の買い物や自宅での料理も少しずつ自分だけでできるようになっていました。

馮秀茜老師(馮志強老師の三女で武館の専属教練)から「混元太極拳二十四式」と「混元剣」の型を習い終え、陳項老師からは「混元太極拳四十八式」と「混元刀」の型を習い終わっていた私は、しばらくの期間は自主練習に励むようにと言われていたので、日常生活を送りながら武館や公園で反復練習に取り組んでいました。

まだまだ身体が脆弱だったので、筋肉痛や慢性病などと向き合う日々でしたが、親切にしてくれる按摩学校の生徒からたくさんの中国語を教えてもらい、週に数回ほど陳項老師のご自宅に通ってご子女と語学の相互学習を行っていた成果もあり、少しずつ中国で生活することに自信が持てるようになり、練習にも余裕がでてきました。

素手で行う太極拳と違い、剣や刀は重量があるので利き腕の右手だけで練習していると身体のバランスが悪くなるような気がして、左手に持ち替えて基本動作をただひたすら繰り返す練習も取り入れてみたり、経絡やツボの場所を覚えて中国按摩の知識を勉強したり、とにかく時間はたっぷりあったので自分のペースでじっくり興味のあることに打ち込んで、毎日が充実していました。

ただなんとなく、これから私はどうなるんだろうという漠然とした不安は消えなかったので、それを振り払うように日々目にする光景や耳にする中国語に夢中になりました。

4月になると北京市内の建物の公共暖房が一斉に停止するので風邪を引く人が続出し、武館に行ってもあまり人がいないことが多かったので、そんな日は早々に引き上げて天壇公園に行っていろいろな武術の練習を見学したり、天気の悪い日は王府井の書店に行って、中国武術の本や、字の練習帳を買ったりしました。

北京に来て半年余りで「混元太極拳四十八式」「混元剣」「混元刀」と、3つも新しい套路(型)を習い終え、それだけでも十分なのに、更に型ではないのですが「混元内功」「混元纏絲功」「保健拍打功(セルフ按摩)」という養生法も必須項目として習っていたので、一度目のスランプで感じた焦りはいつのまにか消えていました。

(今は陳項老師に言われた通り、まず心身を健康にして、中国語を話せるようになって、中国人を理解できるようになって、じっくり自分の太極拳を練り上げていくんだ!)

(そうすれば、きっと未来は開かれるに違いない)

ただそう思うしか他に術がない私は、毎日混元太極拳の自主練習と中国語の勉強に励み、初めて迎える中国の春を感じながら期待に胸を膨らませていました。

この記事を書いた人

日本中国伝統功夫研究会の会長。八卦掌と太極拳と華佗五禽戯の講師。中国武術段位5段/HSK6級/中国留学歴6年(北京市・河南省)

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