2004年9月20日、成田から北京へ向かう飛行機に乗りました。太極拳を学ぶための、期限を決めない留学でした。中国語はほとんど話せず、準備らしい準備もしていませんでした。日本に戻ってきたのは2010年の3月です。
この記録は、その六年半のあいだに北京と河南省で見たこと、教わったこと、失敗したことを書いたものです。書き始めたのは2009年、まだ北京で暮らしていた頃でした。以来2018年まで公式サイトに掲載していましたが、会の活動を休止したときにサイトごと閉じたので、その間は読めない状態になっていました。2023年に活動を再開してから少しずつ再掲してきましたが、今回、最初から順に見直したうえで、改めて出し直すことにしました。
見直すにあたって、一つだけ決めたことがあります。当時の文章は、当時の声のまま残す、ということです。
2004年の私には、この先何が起きるかも、それにどんな意味があるのかも、わかっていません。わからないまま、その日その日を過ごしています。あとから知ったことを書き足すと、その「わからなさ」のほうが消えてしまいます。残しておきたいのは、むしろそちらです。ですので当時の理解も、思い違いも、直していません。いま思うことは、各部の終わりにまとめて書くことにしました。
もう一つ。あの六年半は、私にとって過ぎ去った出来事ではありません。いま教室で伝えているものは、ほとんどあの期間に受け取ったものです。身体の使い方も、動きの中で何が起きているかを見る目も、老師方に言われた言葉も、まだ手元にあります。この記録は、その由来書のつもりで書いています。
話は、中国語がほとんど聞き取れず、型を一つ覚えるのに何週間もかかっていた頃から始まります。
2026年8月 横山春光

