翌朝、ベッドの上で目覚めた私は、他にやることが無いので、また太極拳館に行くことにしました。とにかく卜文徳老師との練習は、1か月の休暇を取ったのです。
まだ完全に疲労が回復していない朦朧とした精神状態で、新館と老館に分かれている『陳家溝太極拳館』の新館のあるビルのエレベーターに乗ると、私の指は無意識に太極拳館のある『7階』を避け、ヨガ・センターのある『9階』を押していました。完全に無意識でした。思考するエネルギーですら消耗し切っていたのです。
そしてエレベーターのドアが『9階』で開くと、そこは……
ホワワワ〜ン
癒しの世界でした。優しい声の綺麗な受付の女性、ヨガの本場インドから来られている深い瞳を持つインド人のヨガの先生、魂に流れ込むインドの音楽。私はそのヨガ・センターに吸い込まれるように受講の手続きを済ませ、翌日から3日間、受講準備レッスンを受けることになりました。
そして初日、中国人の初級ヨガ・インストラクターと一緒に瞑想をはじめた時、私は愕然としました。鏡に映った自分の坐相に驚いたのです。隣のインストラクターの方が体は大きいのに、座った姿には、自分の方がずっと大きな存在感と風格がありました。
とっさに、
(嫌だっ!八卦掌や太極拳を諦めたくない!)
という気持ちと、
(やっと自分のいるべき処に辿り着けた、これで楽になれる)
という相反する気持ちが、ほぼ同時に沸き起こりました。
本当にヨガの道を歩むのであれば、そんな簡単で楽なものではないことはわかっていました。しかし、疲労困憊の私の心と体にとって、ヨガの動きと瞑想法は、あまりにも強烈な魅力を持っていました。
気がつけば、私は連日ヨガ・センターに通い詰め、残りの時間は按摩院に通ってボロボロになっていた頚椎と腰を按摩してもらい、太極拳館にすら週に数回程度しか顔を出さなくなっていました。
2007年7月、私はヨガ・センターで、99.9%の天国に浸っていたのです。