REPORTAGE / 2004–2010

横山春光の中国武術留学記

誕生会と二つの金

武縁

2008年6月20日、鄭州の豊楽園大酒店で、陳正雷老師の60歳の誕生祝いが行われました。この日は正式な拝師の儀式も合わせて行われ、新旧の弟子が300人余り集まり、18人が新たに入室弟子になりました。各派の継承者も招かれた、千人近い人が集まる大きな会でした。

この会の前に、私は太極拳館の事務所で、事務の人からこう言われていました。

「このまま一般学生として続けていても、動作しか学べない。動作はもう習い終えているのだから、日本に帰って教室を開く時の後ろ盾になる。老師に師事した方がいい」

私は、陳正雷老師から直接ご指導いただいたことが、ほとんどありませんでした。お会いする時間がこれほど短いままでは、一生かけて師の背中を見ながら練功を続けることは、自分にはできそうにありません。そう答えて、お断りしました。

翌21日、太極拳館の友人に誘われて、地元の大会「太極拳功夫精英賽」に出場しました。

大会では金メダル2個という成績になりましたが、動作の正確さだけで高得点が出てしまう自分の動きには、納得がいきませんでした。得意だった剣は相変わらず拳友に褒められましたが、それより、苦手だった老架二路の動きの欠点が、八卦掌の動きを学んでから、よく分かるようになっていました。賞賛の言葉より、メダルより、そのことが嬉しかったのです。

そして、この時も心は、北京の麻林城老師の八卦掌にありました。

つづく